写像と単射と全射と全単射について
以前にも「集合と基数の説明 - IIJIMASの日記」 に書いたのですが、再び説明を考えてみました。
数学の集合論で写像というのは、ある集合Aの要素aに対して、集合Bの要素bを1つ定める対応とのことです。特に写像をfで表して、bのことをfによるaの像といいf(a)と書きます。また、「aはfでbに写される」などといいます。とくにAが有限集合の場合、fを表で表せます。逆に表があるとfが定義できます。
たとえば、好きな果物を答えてもらうアンケートした結果の表を考えます。
アンケート回答者 | 好きな果物 |
---|---|
xさん | バナナ |
yさん | リンゴ |
zさん | みかん |
と定めると、「好きな果物」は「アンケート回答者」から「果物集合B」への写像です。
Aのすべての要素をfで写した、Bの要素をすべて集めてできた集合をfによるAの像といいf(A)であらわします。
写像のうちで特殊な性質をもつものに名前がついています。
単射
写像fが単射であるとは、どんな異なる要素x,yのfによる像も同一( f(x) = f(y) )にならないということです。
以下の表で定義される写像は単射ではありません。
アンケート回答者 | 好きな果物 |
---|---|
xさん | バナナ |
yさん | リンゴ |
zさん | リンゴ |
異なる要素yさん、zさんの「好きな果物」の像は同一の「リンゴ」になってしまうからです。このようなことが起こらない写像を単射と呼びます。この例で写像が単射になるのは異なる回答者が同じ果物を好きだと回答しない場合です。1つでもAからBへの単射がある時、Aの各要素に対応するBの重複しない要素があるのだから、Aの要素数はBの要素数以下です。
全射
写像fが全射であるとは、どんなBの要素bに対しても、Aの要素aが存在してf(a)=bとなることです。果物の選択肢の集合Bにじつはブドウもあった場合は、以下の表で定義される写像は全射ではありません。
アンケート回答者 | 好きな果物 |
---|---|
xさん | バナナ |
yさん | リンゴ |
zさん | みかん |
ブドウを好きと答えてくれる回答者がいないからです。このようなことが起こらない写像を全射と呼びます。この例で写像が全射になるのは、すべての選択肢にある果物を好きだという、回答者が少なくとも一人いる場合です。1つでもAからBへの全射がある時、Bの要素に対して、Aの要素が1つ以上存在するので、Aの要素数はBの要素数以上になります。