PならばQの対偶について

前エントリに引き続き論理学の初歩についての話題です。

命題「R」=「PならばQ」からさらに、Rの「QならばP」、Rの「〜Pならば〜Q」という命題を作成できます。真偽値は以下のようになります。

Pの真偽値 Qの真偽値 〜Pの真偽値 〜Qの真偽値 PならばQ(〜PまたはQ)の真偽値 QならばPの真偽値 〜Pならば〜Qの真偽値

さらに、命題「R」=「PならばQ」のRの逆の裏=Rの裏の逆である命題「〜Qならば〜P」を考えることができます。この命題を命題Rの対偶といいます。真偽値は以下のようになります。

Pの真偽値 Qの真偽値 PならばQ(〜PまたはQ)の真偽値 〜Qならば〜P(Qまたは〜P)の真偽値

ある命題とその対偶の真偽値は一致します。R=「PならばQ」と「〜Q」と真であるとき、Pが真と仮定すると、RによってQも真となってしまうので、Pが真というのはあり得ないから、Pは偽でなければならない。すなわち、「〜Qならば〜P」が真であることがわかります。
また、R=「PならばQ」が偽で「〜Q」が真のとき、Pが真であってもQが真でないのだから、Qが偽でPが真であることがあるので、「〜Qならば〜P」が偽であることがわかります。ですので、命題とその対偶の真偽が一致しているのは十分に納得いくことです。
「a=5ならば、a×a=25」とその対偶「a×a=25でないならばa=5でない」はどちらも真ですし、「a=5ならばaは2で割り切れる」とその対偶「aが2で割り切れないならば、a=5でない」はどちらも偽です。ほかにもP、Qにいろいろ代入して考えてみてください。「PならばQ」と「〜Qならば〜P」の真偽は一致するはずです。

では、P=「上司に怒られない」、Q=「残業しない」を代入して「上司に怒られないならば、残業しない」の対偶を考えてみてください。「残業を強要する職場なんて待遇が悪い!」なんてダジャレを言ってないで対偶を考えましょう。〜Qは「残業する」、〜Pは「上司に怒られる」だから、「残業するならば、上司に怒られる」・・・あれ?
これだと、「上司に怒られないならば、残業しない」と真偽値が一致するようには思えませんね・・・これは一体どういうことなのでしょう・・・?

実は、この場合の対偶は「残業するならば、上司に怒られる」ではないのです。
「上司に怒られないならば、残業しない」というのは、たとえば、18時前に上司が「このままでは期限に間に合わないから残業しろ!」と怒ることがあった場合のみ、18時以降に残業するわけです。つまり暗黙の内に事実「怒られる/怒られない」と事実「残業する/残業しない」に時間的な順序があるのです。「上司に怒られないならば、残業しない」はより正確には「上司に怒られないならば、そのあとで残業をすることはない。」と言い換えることができます。そしてその対偶は「残業するのは、その前に上司に怒られたときだ。」ということができます。これなら、元の命題と対偶の真偽値が一致するのが納得できます。
ほかにも、面白い命題が思いついたら教えてください!